物語を読み終え、本を閉じたあと。静かな部屋の中で、登場人物の選択がもう一度心に浮かぶ。私が書きたいのは、そんな瞬間へつながる物語です。
物語の終わりは、読者の中での始まり
すべてを説明し、すべての問いに答えを出せば、物語はきれいに完結するかもしれません。けれど、人の心や人生は、それほど明確に割り切れるものではないと思っています。
正しいと思って選んだ道が誰かを傷つけることもある。失ったものは戻らなくても、その喪失を抱えたまま歩き出すことはできる。罪は消えなくても、赦しを求めることはできる。
答えそのものではなく、答えを探す人間の姿を描くこと。そこに、読後の余韻が生まれると考えています。
異なる世界に流れる、同じ問い
『灰喰らいの王』は、名と記憶をめぐるダークファンタジーです。灰に閉ざされた世界で、人が何を失い、何を守ろうとするのかを描きます。
一方、『ラストエコー』は刑事・柊健太郎を主人公とする警察ミステリーです。事件が解決したあとにも残る、人の記憶や後悔、善意の影を追います。
舞台も物語の仕組みも異なります。それでも根底にあるのは、人間の弱さ、希望、罪、赦し、喪失、再生、そして選択です。
弱さを否定しない物語
強い人物だけを書きたいとは思いません。迷い、間違い、ときには逃げてしまう人間を書きたい。弱さがあるからこそ、その人がもう一度選び直す瞬間に意味が生まれるからです。
再生とは、傷がなかったことになることではありません。傷を抱えたままでも、自分の足で次の一歩を選ぶこと。その小さな意志を、物語の中で見つめていきたいと思っています。
十年後にも残る一冊を
Vaelor Booksが目指すのは、数だけを重ねる出版ではありません。一冊から次の一冊へ、シリーズの世界と登場人物を丁寧に育て、十年後にも読み返してもらえる作品を届けることです。
読者が本を閉じたあと、自分自身の記憶や選択を少しだけ思い返す。そんな静かな時間まで含めて、一つの物語だと考えています。